Tale:JAPARIコンソーシアム-菜々津-01

提供: ますとどんちほー図書館
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カイと面と向かって会うのは久しぶりの事だった。だけどそれが気がかりでもあった。最近JMilの方はドリフターズとの戦争で忙しいらしく、カイも最近は守護獣の顔しか見てなくて寂しいとほざいていた。そうは言いながらも職務は確実にこなしている、そんな忠誠心に憧れる。

本部を歩きながらそんなことを考える。ふと周りに目をやると違和感を感じる。皆やけに歩く速度が速い。こんな様子なのは性奴隷戦争以来だ。いい空気ではない。

それに…最近は会っていないからなんとも言えないが、カイがいつものカフェを指定しなかったのも不思議だ。どうやらフレンズに話せない何からしい。

しばらく歩いて本部の外れの喫茶店に着いた。入ると奥にシバとカイの二人がいた。が、カイは机に突っ伏して寝ていた。

音を立てないように席に付く。給仕にも気を使わせてしまっている。

コンソーシアムの元老ともあろう方がこの有り様。

「さっきは面白かったですよ。『スザク…愛してるよ…だけどダメだ…』って寝言言ってましたよ。ウェイターと一緒に笑っちゃいましたよ。」

シバがおかしそうに小声で言う。給仕も失笑しながらコーヒーを置く。

「起こそうか?」

「まだ時間もあるし、やめておきましょう。今日は暇だったしいい暇つぶしになるわ。」

そう言ってコーヒーを飲む。



「ゲートジャンプで行くぞ…全艦、艦載機発艦準備……イエローアラート……」



「クジャク……君はいつも美しいな……見とれて時間の流れさえ忘れてしまう……」



「スザク……叶うなら君を戦場に行かせたくない……身勝手な人類を許してくれ…」



カイのような本心が中々見えない人にとって…少しずるいような気もするけど、こういう機会はありがたい。



30分ほど経っただろうか、カイが眠気眼をこすりながら顔を上げる。

「おはよう、カイ。」

シバが声を掛ける。カイはそれに頷きで返す。まだ眠そうだ。

「カイ、久しぶりね。」

そう呼びかけるとカイがあくび混じりに尋ねる

「久しぶり…はあ。何か寝言でも言ってなかったか?」

シバと目が合った。笑いながら首を横に振る。カイは気づいていないようだ。

「眠気覚ましにコーヒーを頂くとするか。」

カイがウェイターを呼ぶ。

「ここしばらく戦闘続きで中々話す機会が取れなくてね。ついに朱雀艦隊が後方で再編することになったから、久々の長期休暇さ。皆思い思いの休暇を過ごしてるよ。」

「スザクとデートは?」

シバが茶々を入れる。

「あいつはパークでレセプションパーティーに出てるよ。一週間もやってるらしい。なんでもアニマルガールの英雄として祭り上げられてるとか。」

「行かないんですか?一緒に。」

シバの冷やかしに乗る。

「あの人たちの体力にはついていけない。パーティーともなると体がいくつあっても足りない。」

笑いながら次の言葉を待つ。

シバも乗った。

カイはしばらく黙り込んでいたがついに沈黙を破った。

「わかったよ、言えばいいんだろ。パーティーが終わったら二人で会うよ。これで満足か?」

シバはそれで満足したようだったが、私は違った。

「場所は?」

「それ言う意味あるか?」

「あるわ」

「そうだな…推測は?シバ。」

「パーク内のどこかかな?」

「そういうことにしておこう。」

はぐらかされた。どうやら答える気はないらしい。

「二人のプライベートな時間が欲しくてね。場所を解き明かそうとするのも止めはしないが…エクスプローアーシステム仕様のストラティオスにこの宇宙で最高の士官二人だ。振り切ってやるよ。」

カイのジョークを流しつつ本題を促す。カイはコーヒーを飲みつつPDAを操作する。


「知っての通り我がコンソーシアムは非正規ながらドリフターズとの戦争に突入した。」

カイの口調から鑑みるにどうやら重い話らしい。

「そして悪いことに、現在我々が後手に回って、押されている。」

カイがこういう回りくどい説明を頭にする時は決まって難しい問題の時だ。

「現在DEFOMEGA2が発令され、ネリカ3が陥落したところで朱雀艦隊が消耗のため再編中だ。」

シバが体を起こして考え込む。少し間を置いてカイが続ける。

「インテリジェントオフィスの予測によれば早くて9ヶ月でパークに攻勢が及ぶ。」

シバは既に知らされていたことだったようだ。動揺しているのは私一人だ。

「そんなに早く…」

「現在戦時艦隊も訓練中だ。ただ、この艦隊でもフレンズが駆り出される事は確かだ。」

「だが、四神級の旗艦も用意できないのにフレンズを前線に駆り出すことはしない。元老院は概ねその意向で固まっている。理事会も恐らく続くだろう。後方指揮の形になる。」

私は胸を撫で下ろした。しかし、本質はそこではなかった。

「ナツとシバには7ヶ月以内にフレンズの避難計画を練って欲しい。」

背筋が凍る。フレンズはサンドスターなしでは生きられない。避難する先などない。意志を汲み取ったかのように続ける。

「パーク外でフレンズを永続的に維持する方法だが、セキと少し検討した。」

PDAをこちらに見せる。元動物に戻して人格のみ神経転送の要領で保持する。フレンズの体でコールドスリープする。パークの地下に避難施設を作り、サンドスター火山よりサンドスターの供給を受け、完全に隠れる。どれも検討段階の物だったが、検討する価値は十分だった。

「今一番可能性があるものはパークの地下に隠れる案だ。これで避難計画を作ってもらいたい。秘匿性を考慮してJMilの工作部隊が建築に当たる。利用可能になるのは遅くても4ヶ月、完成予想は1年後だ。完全に隠し通す必要がある。そしてこちらも確約する。」

一呼吸置いて続ける。

「パークが完全に掌握されようとも、コンソーシアムの領土が全て無くなろうとも、我々は諦めずにパークを奪還する。十年かかろうとも、百年かかろうとも。」

カイの目には強い意志の光があった。

「だから、どうか再び日を見るその日まで、耐えてくれ。」

「わかったわ。」

応える。

「話は以上だ。早速計画を練ってくれ。」

シバが頷く。私も続く。

「あぁ、そうだ。ナツは残ってもらえないか?個人的な話がある。」

シバが察して。代金を置いて喫茶を後にする。その背中を見送ってカイが封筒を取り出す。紙媒体などという骨董品を博物館と古物商以外で見ることになるとは思わなかった。

「これを託したい。」

その封筒を受け取った。

「その中に封筒が二つ入っている。一つは私の、もう一つはスザクの遺書だ。」

私は狼狽した。

「気持ちは分かる。だが、未来への希望という意味でもナツに託したかった。」

「ナツが死ぬようじゃ、コンソーシアムの未来に光は無いからな。」

カイが少し俯いて続ける。

「わかったわ。他にも相談があったら遠慮せずに言ってね。」

「ありがとう。その一杯は奢るよ。」

そう言って代金を置いて立ち上がった。

「どこへ?」

「パークへ行ってくるよ。皆パーティーに出払ってるから、フレンズのいないパークも一見の価値ありかと思ってね。」

そう言って席を後にした。

見送る背中には、決意が宿っているように見えた。戦争に疲れているようにも。